東京高等裁判所 昭和38年(う)2692号 判決
判決理由〔抄録〕
然してブルトーザーによるダンプカー引上げの作業をするに当っては、まづ、なに人かが両車輛の間に入ってワイヤー接続の作業をしなければならないわけであるから、ブルトーザーを操縦する者としては周辺の情況を十分に注視し、ダンプカーと自車との間に入ってワイヤーを接続する者がその作業を完了して外側に待避するのを確認し、然る後に行動を開始すべきであるのに、被告人がその点について万全の注意を払ったとは認められない。またブルトーザーの如き重量の大きな車輛を進退させるに当っては殊更にその操作を慎重にすべきことは当然の義務であるに拘らず、被告人はこれを怠り、後退の操作をすべきところを誤って前進の操作をするという重大な過失を冒し、その結果両車輛の間に入っていた野部を挾圧して、圧死せしめたものであって、業務上過失致死の罪責を免れないことは当然である。仮りに所論の如くダンプカーを押上げる目的であったとしても、被告人は検察官に対し、「ダンプが自力で上ろうと前進後退をくり返していたので、そのまま後からダンプに接着しては危険なので、少し後退しようとした。その時野部がワイヤーを持って、ブルの左側前方にいることが判った。ところが後退しようとして、クラッチを入れたら、ギヤーが前進のままであったために、ブルが前進してしまい、野部を挾んでしまった」旨を述べている位であるから、被告人はブルトーザーの操縦につき、周辺の情況ないしその操作自体に慎重な注意を欠いた過失があるものということができる。然らばいずれにしても、野部が両車輛の間に介在したことは被告人にとって予見不可能のことに属し、野部の死亡の結果を被告人の責任に帰することはできないと論ずる所論は採用の限りでない。